人生のごった煮

完璧な心の平和

大切なことをひとりで成し遂げにゆくときのための名前があるの


家出をしてきた。



家庭環境が最近どんどん悪くなってきており、私に残された選択肢が


⒈自殺する

⒉家に放火する

⒊家出


の三択になったためである。
物騒なのを選ばなかっただけ褒めて欲しい。


昔からヒステリックサイコマザーと育児無関心女好きファザーの間で板挟みになり窒息しそうになっていた節があるが、最近は夫婦間の不仲がひどくなり、かなりキツかった。


まずご飯がない。


別に育児放棄をされているわけではなく、ご飯がある時(父親が家で晩を食べる時)以外は普通に1000円札を貰っている。

ちなみに1食に1000円かけるのは勿体無いので食事を抜いたりして貯金している。

元々私は母親から離れるためにも自分の分のご飯は自分で作るというスタンスだったので、特に支障はないが、完全に家族の間で生活が分断されたな、と感じた。



そして会話がない。



今までは父親・母親の機嫌がいいときに会話があったが、それが完全になくなった。

何があったのかは知らないが、父親の機嫌が完全に悪くなり、母親もそれに引きずられるように機嫌が悪くなった。

ただいま、おかえりがないのはもちろんのこと、本当に会話が一切ない。

当然目が合うこともない。





これだけのことか?と思われるかもしれないが、これだけのことが私は凄くきつかった。

同じ家に3人の人間が別居している感覚。

自分の存在が完全に無視されて、だけどそれが犯罪にならないこともわかっていたから余計きつかった。

むしろ殴られて蹴られて、罵声を浴びせられていた時の方がよっぽど良かったとまで思った。

昔の私なら「死のう…」となっていたところである。
しかし今の私は割とすこやかに生きているので、



ヒャッホ〜〜〜!!!家出やっちゃお〜〜〜!!!!!!☆彡



の考えが先に出た。


先ほど自殺か放火か家出か、と述べた。
あれは嘘だ。
完全に家出一択だった。



準備


私は昔から家出装備の一式を揃えるのが大好きだった。

無論装備が必要なほどの大層な家出をしたことはない。

ただ単に冒険の準備をするようなワクワク感が好きだっただけである。

ということで、探したらその装備が出てきた。

以下中身。

☆1万円札
☆ジャージの上下とジーンズ、パーカーに上着、下着と靴下3日分
☆お風呂セット
☆歯ブラシ
☆たためるブランケット
カロリーメイト数箱

もはや防災セットである。

これに最低限の化粧道具、コンタクト、身分証などを入れると早くも家出の準備が整った。

家出を考えている諸兄、家出の際に持っていくものは防災セットを参考にしてみることをおすすめする。


家を出る


家を出るならやっぱり深夜。

定番である。

といっても父親も母親も起きているので特に深夜に出る意味はない。

雰囲気だ。

特に引き止められることもなくスーッと家を出た。

そこは引き止めてくれよ。

まぁとにかく家を出ることには成功したので、泊まり先を探すことにする。


泊まり先


野宿なんてすると若い女は襲われる?!
知らんわ!!!かかってこいや!!!!!!

の気持ちで家を出たが、別の角度で困ることになった。

野宿するところがないのだ。

なぜなら、公園もどこもかしこも必ず人がいる。

なんでだよ。

深夜じゃないのか。すこやかに寝てくれ。

困り果てた。

考えなしに家を出た私が悪いのだが、このままだと寝ずに夜を明かすことになる。

インターネットカフェの会員証はあるが未成年なので泊まることは出来ない。

結局ぶらぶらと歩いて夜明けを見た。

山の稜線が赤紫に染まる景色は綺麗で、それだけでも家を出た価値はあったように思えた。

夜が明けた


とりあえずネットカフェに行く。

あそこはシャワーもあるし食べ物飲み物の注文も出来るし漫画も読み放題だ。

そこで昼間の時間を潰し、夜に備えて計画を立てた。

やはりある程度の年齢に達していないと合法的に屋根のついた場所で夜を過ごすことは出来ない。

一度は捨てたこの身体、売り物にでも何にでもしてやろうという思いはあったが、なにぶん田舎なので確かな出会い系サイトが無い。(確かな出会い系サイトとは?)

悩みに悩んだ末、母方の祖母の元へ行くことにした。

やっぱり知り合いの家などでないと継続的な生活は出来ない。

母親と祖母はほとんど縁が切れているので、家庭に戻される不安はなかった。

そうと決まれば早速JRに乗って2時間。

祖母の家に着く。


祖母の家


あくまで母親と祖母の間が険悪なだけで、私と祖母は連絡も取り合えるし仲もいい。

私が入院した際には親族の中で唯一お見舞いに来てくれた上に、両親以上に丁寧に話を聞いてくれた。

さすがに突然訪問するなんて失礼なので先に連絡を入れた。


「わかりました。〇〇ちゃんが来るのを待ってますね。〇〇ちゃんの好きなマドレーヌもあるからね。」



と返信が来た。




泣きそうになった。




ここ1ヶ月でまともに人の愛情が感じられた瞬間だった。


家に着いて泣きながら謝っても、笑って中に入れてくれた。


整形した話をしても、あなたがそれで楽になれるならいいじゃないと言ってくれた。



ずっと泣いていた私に付き添ってくれた。



一緒に晩ご飯を作った。



一緒にテレビを見た。



一緒に笑った。



すごく幸せだった。


お風呂にも入れてもらって、布団も敷いてもらって、母親がいる時には近寄れなかった仏壇に手を合わせて、ぐっすり眠った。



翌朝になるとずいぶん気が楽になっていた。

いくらでも泊まっていたらいいと言われたが、ずっといるなんておこがましいと言って断り祖母の家を出た。

出る前にお菓子を沢山もらった。

帰りのJRで半分食べて残りはとっておいた。

家に戻るといつも通りで、祖母が連絡していなかったのは本当らしかったが特になにも言われなかった。









少し生きるのを頑張ってみようと思った。









題字は穂村弘「手紙魔まみ、夏の引越し(ウサギ連れ)」より。

失くしたと思っていたが家出セットの中に入っていた。

好きな短歌があるページに1000円札とカッターの刃が挟んであった。

家出した時に生きるか死ぬか選べるということかな、と思った。

昔の自分のその感じがなんだか好きだ。