人生のごった煮

完璧な心の平和

生きる意味などは後からつく



プチ整形をすることにした。





OD、リストカット、飲酒、自殺未遂と様々なメンヘラ芸を極めてきたがとうとう整形に手を出してしまった。

これ以上メンヘラとしてする事などないのではないか。

やり尽くした感がある。

とりあえずプチ整形(埋没法)してきました、というレポートです。





私は小さい頃から自分の目がコンプレックスだった。

平均的な女性の顔にモンゴル人力士の目をつけてみて欲しい。

想像できただろうか。
それが私だ。

この非常にアンバランスな顔は、五十路になっても端正だと褒められる父親から目以外のパーツを、お世辞にも美人とは言えない母親から目のみを受け継いだ哀しき遺伝に起因する。

今までの学校生活では、アイプチやアイテープなど様々な二重まぶた形成用化粧品を駆使し平均的な顔を保ってきた。

しかし考えてもみてほしい。

朝起きて鏡と対面してモンゴル人力士がこちらを見ている瞬間を。



辛さしかない。



その他にも人と間近に顔を合わせることが出来なかったり、一重に戻った際はトイレに駆け込んで泣く泣くやり直したりと、生きるのに不便なことしかなかったのでいっそのことと整形することにした。



しかし整形といえど一筋縄ではいくわけもない。

悲しきことかな私は未成年者であり、親の了承が無ければ施術は出来ないのだ。

だがここで引き下がるわけにはいかない。

高校入学前というのは、絶好の整形チャンスだ。
中学校までの交友関係は一掃され、新しい学友と教師に囲まれる生活。
昔の私を知る者が少ない状況は、整形にぴったりである。


そこで母親に相談することにした。


相談する前に、母親と私の関係性について書いておこうと思う。
私の母親は鬱・ADHDパニック障害を患っている精神病ビンゴ女である。
今は色々とあり家庭内別居状態。


その母親に相談するのである。
どんな答えが返ってくるのか想像もつかない。
快諾してもらえたら良いが、流石に実の娘の顔が変わるというのは受け入れ難いだろう。




まあ言ってみるしかない。





私「かくかくしかじかでプチ整形をしたいんですが」


母「いいよ」








快諾〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!!!!!!










なにか裏があるのではと勘繰りたくなる程の快諾だった。

仮にも十余年連れ添ってきた愛娘ではないのか。愛しいかどうかは知らないけど。

金は自分で払ってねとの事だったので、貯金に加え今月の食費を削ることにする。
家計も別々にするというのが家庭内別居の方針である。
なので高い買い物をするとそれ相応のツケが回ってくる。
さらば健康で文化的な最低限度の生活。

とにかく了承してもらったので、次のステップに進むことにする。



病院を探す


私が住んでいるところは田舎中の田舎なので、美容整形外科が少ない。
選べるほどあるわけでもなかったので、無難に城本クリニックにした。
あのフカフカな毛布の上をひたすら女の人がゴロゴロするCMの城本クリニックである。
特に口コミを調べることもなくカウンセリングの予約を入れた。
こういうところで人生に対する真摯さが出る。


応対してくれた女性はいかにも慣れている様子で、こちらから言わずとも疑問を解消してくれる。

彼女は終始柔和な笑みを顔に貼り付けていたが、精神科にかかっていると言った時に一瞬真顔になった。辛さがあるがこんなところでめげていては始まらないので笑顔で返した。

担当医は受付の女性と打って変わって、なんというか“魔女”と呼ぶに相応しいような人だった。

非常に綺麗な方なのだが、千と千尋の神隠しに出てくる湯婆婆みたいな性格をしている。
承諾書に名前を書きな!
希望の二重のラインは?!
そこに横になりな!
みたいなテンションで話が進んでいく。

施術


気づいたら手術室で横になっていた。
顔に謎の布がかけられていたり、その布がめちゃくちゃゴワゴワしていたりと疑問は尽きなかったが、一番気になったのが大音量で三浦大知のEXCITEが流れていること。



なんで?!?!?!?!
私は三浦大知を聴きながら施術を受けるの?!?!?!?!?!?!
そんなEXCITE⤴︎ EXCITE⤴︎ なノリで二重になるの?!?!?!?!?!?!?!?!?!



などと混乱していたが、看護婦さんたちは点眼麻酔をしただけで退出し、部屋には私ひとりきりとなった。

ひとりきりで爆音の三浦大知を聴く。

これほどにシュールな空間があるだろうか。


EXCITEも終わり私が虚無になりかけていた頃、ようやく担当医の魔女がやってきた。



「は〜いじゃあちょっとチクッとしますね〜」



心の余裕が出来ていない中麻酔を打たれる。言うほど痛くはなかった。

それよりも気になったのがまたしても大音量で音楽が流れ始めたこと。
宇多田ヒカルの「HEART STATIONである。


「じゃあ糸通していきますね〜」


肌寒い雨の日
ワケありげな二人
車の中はラジオが流れてた…



「ちょっと痛いかもしれないです〜」



さよならなんて意味がない
またいつか会えたら
素敵と思いませんか?…



「右目終わりました〜」



私の声が聞こえてますか?
深夜一時のHeart Station
チューニング不要のダイアル
秘密のヘルツ…



「ちょっと上向いてください〜」




心の電波 届いてますか?
罪びとたちのHeart Station
神様だけが知っている
I miss you…




「はい、終わりました!目開けてみてください!」





終わった。






鏡を見るといつも化粧をしているときの私の顔で、すっぴんで化粧してる状態になれるって便利だ…と思いました。

二重を作っている人で特に抵抗がない方は埋没法をおすすめします。おわり