人生のごった煮

完璧な心の平和

最近の読書録〜麦の海に沈む果実を読んでくれ〜

ペンで文字を書くのが苦手だ。

前のブログで書いたように精神病院にぶち込まれている。(ちなみに私は前回のブログを書いた記憶は無いのだが、一度あげたものを撤回するのもなんなので掲載したままだ。恥ずかしい)

精神病院の立地が悪いのか、あまり通信状況が良くない。なので必然的に文字を書くには紙にペンを走らせる必要が出てくる。

手書きは、思考のスピードと書くのに必要な時間が一致しない。いや、一致しないと思うのはフリック入力に慣れすぎたためか。
スマートフォンという便利な機器が登場してからというものの、もっぱらメモ帳機能にフリック入力で文字を打ち込んでいくばかりだ。
予測変換という便利な代物も相まって、漢字を調べる手間も省けてしまう。

白紙に向かってペンを構えていると、思考がとめどなく浮かんできて、それを紙に書きつけようとする頃には別の事柄が浮かび、いつの間にか最初に考えていたことは記憶の彼方へ消えてしまう。

なので、夏季休暇の課題として課されている読書感想文にも非常に手間取っている。
考えたことをすぐ文字にできないので、その差分がもどかしい。
頭の中でしばらく練ってそれを形として出すのが苦手なのだ。実際ブログも書いたら書きっぱなし、推敲も再読もしていない。

タイプライターなども存在しなかった昔に書かれた文章は、すべて頭の中で一度練られたものなのだと思うと感慨深い。

太宰治などの超個性的な文豪も、一度頭の中で整理整頓をしているのだ。不思議な気分になる。

―――

書くのは苦手な私だが、読むのは大好きだ。
小学生の頃は毎日二冊(それが図書室で借りられる限度だった)の本を読み、週末には図書館で何時間も読書に耽った。

携帯を警察から没収されていたこの一週間で読んだ本がこちら。

図書館で血眼で読みたい本を探しまくった。
一週間にしては割と読めた方ではないのだろうか。楽しかったけど疲れた。


以下読書感想文〜〜〜!!!!!みんな〜〜〜!!!!!ついてきてくれよな〜〜〜〜〜!!!!!!!!!!!

⒈その女アレックス

https://www.amazon.co.jp/dp/B00PLGP9HM/ref=cm_sw_r_cp_awdb_c_ikTABbA195A34

再読。
割と書店で平積みされている光景を見る。
実際ミステリとしても上出来で、続編もなかなかに楽しませてもらった。
この主人公アレックス、最初に突然買い物途中に男に襲われ監禁される。ここまで書くとアレックスが純然たる被害者のように見えるが、実際はそんなことはなく。
アレックスの壮絶な過去から物語は二転三転し、圧巻のフィナーレが待ち受ける。
私がこの作品を何度も読むのは、アレックスの人間性に惹かれているからだと思う。理不尽な暴力。自身の女性性に傷つき、それでもしぶとく生きていく。

少し話はずれるが、「パラダイス・モーテルにて」という短編も似たような女性が登場する。彼女は娼婦として生きていたが、自分を抱いた男を刺し殺し、新たな人生に向かって一歩を踏み出す。

ここまで書いてようやくわかってきたがわたしは強い女が好きらしい。
愛する女もめちゃくちゃ強いし…………………………………

ツァラトゥストラはこう言った

https://www.amazon.co.jp/dp/4003363922/ref=cm_sw_r_cp_awdb_c_ulTABbAA417C4

誰もが知る哲学書である。

私が人生に絶望していたとき、唯一の救いが哲学だった。
哲学本を読み漁り、著名人の論文に目を通し、昼夜問わず生と死、我々の存在について考えていた。

哲学にのめり込んでわかったこと、哲学だけはやめとけ。アホみたいに遊んで暮らそう。人は死に、全ては無に帰すのだから……………

⒋伯林蝋人形館

https://www.amazon.co.jp/dp/4167440091/ref=cm_sw_r_cp_awdb_c_4ATABbC5096E4

来ました我らが皆川博子

皆川博子さんの作品はどれも珠玉の名作ぞろいなのだが、いかんせん読むのに莫大な精神力を要する。
それに加え、私が長編は一気に読まないと満足出来ないたちなので、学校がある時はなかなか読めない。
高校に入学してから読めた皆川作品は、「少女外道」「総統の子ら(しかも再読)」だけである。非常に希薄としか言えない。
なのでこの機会にと「伯林蝋人形館」と合わせて借りてきた。

読了後感想。
皆川博子ワールドにどっぷり浸かってしまった。
彼女は本当に狂人を書くのが上手い。
読んでいるうちにこちらがその世界観と狂気に引き込まれていってしまう。
「クロコダイル路地」では「開かせていただき光栄です」の面々が揃っていて感激してしまった。そうか、ネイサンは小説家になり、アルは妻子を持ち…とまるで友人のようにしんみりした。
これはこれから皆川博子作品を読もうとしている方へのアドバイスなんですが、皆川博子作品は刊行順に読むのが一番です。すべてを間違えた私より。

堀辰雄

病院の本棚からかっさらってきた。
読む人もなかなかいなかったと見え、埃が層をなしている。
個人的には谷崎潤一郎の「神童」がわかる〜〜〜!!!!!だった。
決して自分が神童だとかそういうことを言いたいのではなく、自分が人より優れているという傲慢が段々偏屈に化して行く様子が自分と重なりすぎて辛かった。あと自分の逃れられない本能と醜形に絶望する様も。
哲学をある程度やった人は急にアート方面に行くのですが、その理由はこれを読めば大体理解できると思う。

堀辰雄は本当に女々しい文章を書きますよね…好き………

7 三月は深き紅の淵を

https://www.amazon.co.jp/dp/4062648806/ref=cm_sw_r_cp_awdb_c_FSTABb7512B74

洋書はまだ読み込みたいので飛ばしました。
めちゃくちゃ面白かった。
まず「解説 皆川博子」の文字からサイコーが確定しているだろう。
これだけでブログ一本かけてしまう。
この作品は非常にややこしく、続編(と言えるのか?)の「麦の海に沈む果実」も読む必要がある。というか読んでくれ。できれば黄昏の百合の骨も黒と茶の幻想も読んでくれ。

話は平々凡々な会社員鮫島浩一が会長主催のお茶会に招かれるところから始まるのだが、そこからのミステリが素晴らしい。
一章目でなるほど、こんな構成だったのかねと納得しているところに二章目が来る。これはなんなんだ?私は今何を読んでいる?足元の基盤が揺らぐような感覚に陥る。
そこからジグソーパズルのピースのように散りばめられる物語の端々。
段々全容がわかってきたところで、余韻を残しつつもきっちりと締める。

いわゆる「入れ子方式」の作品なのだが、「麦の海に沈む果実」も一緒に読むと更に楽しめることだろう。
時系列としては三月は深き紅の淵を→麦の海に沈む果実なのだが、逆の方が楽しめる気がする。
まあそこは個人の裁量に任せるしかない。
およそノート見開き三ページにわたる「三月は深き紅の淵を」考察は、いつかの機会にまた書くことにしようと思う。


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麦の海に沈む果実を読むことで、
「水野理瀬は夢を見ていた。」
の一文で爆音のビート深夜零時くらいのテンションになれます。

麦の海に沈む果実を読んでくれ。